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接着コラム

脱水銀に寄与するUV硬化ガスケットとは? ~ 環境対応を実現する積水フーラーの新技術LED硬化型液状ガスケット ~

25.07.19

水銀使用の規制が強まる中、環境に配慮した製品の開発が進められています。しかし、水銀を使わない代替技術や素材の開発にはいくつものハードルが存在します。こうした市場環境に対処すべく、積水フーラーは「脱水銀」と「高性能」を両立させるLED硬化型液状ガスケット(CIPG: Cured In Place Gasket)の開発に取り組んできました。製品開発に当たって積水フーラーが直面した課題は何か、そして、環境対応だけではない実際の生産現場で生かされるメリットは何か。積水フーラーが開発を進める環境に配慮した製品の一つを紹介します。

世界が進める脱水銀と市場の課題

水銀はUV(紫外線)ランプ、温度計、電気スイッチなど、長年多くの産業製品に利用されてきました。積水フーラーが製造する液状ガスケットも、硬化処理に使うUV光源として水銀ランプを用いています。

産業の発展に貢献する一方で、水銀は工場廃液や有機水銀系農薬などによる環境汚染が深刻な問題となっています。現在では、人体や生態系に有害な物質として、水銀に対する国際的な規制の強化が進み、2023年には微量の水銀が含まれていることから蛍光灯の製造・販売が禁止され話題になりました。企業はこの規制に対応するため、脱水銀製品の開発を急務としています。しかし、高性能でコスト効率のよい代替技術の実現においては、主に以下の点が課題となっています。

  • 高性能の維持
    水銀を使った製品と同等、またはそれ以上の性能を確保する必要
  • 生産性との両立
    環境規制に対応しつつ、生産効率を高める技術の確立
  • コストと設計自由度
    コストを従来同等に抑え、設計上の制約を克服

脱水銀とLED硬化型液状ガスケット

本稿のテーマであるガスケットは、配管や各種機器の接合部に取り付けて気体や液体を密封するためのシール材です。金属やゴムを用いた固体タイプの製品のほか、ディスペンサーで自由な形に塗布できる状タイプのガスケットがあります。そのなかでもUVを照射して固める液状ガスケット(CIPG)は硬化速度が速く、1mm以下の細線塗布にも対応できるといった特長から、自動車部品を中心に電子機器、家電製品などの産業用途で利用されています。

CIPGのプロセスフロー

冒頭で触れたとおり、このUV光源に水銀ランプが使われています。水銀はUVを効率よく発生させる特性を持つほか、高いエネルギー密度と安定した光出力を示すことから、長年にわたって優れたUV光源として重宝されてきました。しかし近年、環境への配慮から脱水銀が喫緊の課題となってきました。そこで積水フーラーでは、硬化処理に水銀ではなくLEDを光源とする液状ガスケットを開発しました。

水銀からLED化における技術的課題

水銀ランプ同様LEDランプでもUVが照射できるなら、単に光源を置き換えれば良さそうに思いますが実際はそう簡単ではありません。開発に当たって積水フーラーが直面した最も大きな技術的課題は、水銀ランプとLEDランプの「発光エネルギー」と「発光波長」の違いでした。水銀ランプは365nmの波長を中心に254nm/303nm/313nmの紫外線を幅広く放射します。液状ガスケットの多くは365nmの波長で効率良く硬化するよう設計されているので、LEDを用いたUVランプでも365nmの波長を照射すれば液状ガスケットを硬化させることができます。ですが、ここで問題となったのが発光エネルギーです。

LEDが発するUV光(UV-LED)は水銀ランプに比べて発光エネルギーが弱く、照射されたUVが酸素に邪魔されて液状ガスケット表面の硬化を妨げる「酸素阻害」が発生する傾向があります。表面硬化性が損なわれると、硬化処理を施しても液状ガスケット表面に「タック」と呼ばれるベタつきが残り、周辺部への不意な付着によって作業性を低下させる原因となります。このタックは、365nmとは別に280nm波長のUVを照射することで解消できることが知られています。

水銀ランプは365nmのほかにも280nmを含めた複数の波長を同時に発するため、液状ガスケットの硬化とタックの解消に1つのランプで対応できます。ですがLEDランプは波長範囲が狭く、基本的には特定の波長を中心とした単一波長しか発光できません。このため、硬化用とタック解消用、波長の異なる2つのLEDランプが必要になり、専用設備を用意するコストが増えてしまいます。また、280nm波長のUVは殺菌や除菌に使われるなど強い殺菌作用を持っており、人体への影響も大きいため扱いには注意が必要とされています。

UV-LEDの課題を解決したタックフリーの液状ガスケット

こうした技術的課題に対して積水フーラーは、キーとなる原料の設計と選定、そして配合バランスを最適化することで、365nmの単一波長のみでタックフリーを実現するUV硬化型液状ガスケットを開発しました。

ディスペンサーを用いて塗布する液状ガスケットは、高い形状自由度、微細部位への適用といった設計面のメリットに加えて、必要な箇所に必要な分だけを塗布でき材料のムダが省けるため廃棄ロスの削減や在庫管理の効率化が可能です。また、ディスペンサーによる自動塗布によって作業現場の省人化や生産性向上に寄与するほか、リワーク(再作業)が可能でメンテナンス性にも優れています。

こうした液状ガスケット本来の特性に加えて、積水フーラーのLED硬化型液状ガスケットは、365nmの単一波長で硬化し、タックフリーを実現します。これにより、以下のようなメリットが提供可能となりました。

  • 365nmの単一波長のみで硬化とタックフリー化が可能なため、専用設備を用意するコストを削減
  • 人体への影響が懸念される280nm波長のUVが不要となるため、作業者の安全性を向上
  • タックフリーのため周辺部への不意な付着が起きにくく作業性を向上し、且つ固形ガスケット同等のリワーク性を実現

積水フーラーのLED硬化型液状ガスケットは、脱水銀という社会的な要請に応えるだけでなく、生産性、安全性やコストといった生産・設計の現場が抱える多くの課題を同時に解決するソリューションです。液状ガスケットの選定や導入に関してお困りの際は、ぜひお声がけください。

UV硬化型液状ガスケット(CIPG)の製品詳細や資料のダウンロードはこちらから

また、積水フーラーは、お客さま一社一社の用途・ニーズに合わせた物性のコントロールや製品のカスタマイズも可能です。接着剤・粘着剤・シーリング材の環境対応に関するお悩みをお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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