接着コラム
【Glue Talk】未来を動かす力:新しいエネルギー蓄電貯蔵システムの成長
26.01.20

本記事はH.B. Fullerのウェブサイトに掲載された技術ブログを積水フーラーが翻訳したものです。
記事原文は以下のリンクからご覧いただけます。
▶Powering the Future: The Growth of New Energy Storage | Adhesives manufacturing company
執筆者:Florian Schloegl(ビジネスマネージャー ePower & クリーンエナジー/EIMEA地域)
持続可能なエネルギー源は、世界のエネルギー需要を満たすうえでますます重要な役割を果たしています。たとえばアメリカでは、再生可能エネルギーの利用量が 2024年から2025年にかけて8.8%増加し、現在は国の電力供給の 約4分の1 を占めるまでになりました。
太陽光、風力、波力といった新しいエネルギー源をさらに拡大していくためには、蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS:Battery Energy Storage System) への投資が欠かせません。BESSはエネルギーを貯め、必要に応じて電気として放出することで、安定的な電力供給を可能にします。
接着剤は、BESSを構成する部品を固定し、冷却し、絶縁する役割を担い、システムが寿命を通して効率的に発電できるよう支えています。バッテリーセルの状態を監視・制御する バッテリーマネジメントシステム(BMS) でも、接着剤は同様に重要な機能を果たします。
新しいエネルギーの成長に合わせてBESSの設計が進化していく中で、業界はこれから、新たな要件に応える革新的な接着ソリューションを必要とするでしょう。
世界は、よりスマートで安全な蓄電エネルギーのソリューションを必要としている
国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネルギーは2030年までに世界のエネルギー需要のほぼ半分を満たす見込みです。また、世界のエネルギー蓄電容量は、今後数年でテラワットアワー(TWh)規模に到達すると予測されており、これは「膨大な量のエネルギー」を表す基準となる数字です。蓄電エネルギーのソリューションが必要とされる理由は、再生可能エネルギーの発電量が常に一定ではないためです。
H.B. Fuller の ePower/ストレージ&クリーンエナジー部門 ビジネスマネージャーである Florian Schloegl(フロリアン・シュレーグル) は次のように説明します。
「太陽光や風力は、常に“オン”になっているわけではありません。蓄電池バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、需要と供給の調整に活用できます。余剰エネルギーを蓄え、発電が少ない時期や需要が高まる時に放電することで、安定供給を支えるのです。」
BESS が新しいエネルギー成長を支える仕組み:
- ピークシェービング(需要ピークの抑制)
需要が高い時間帯にBESSが電力を供給することで、その時間に電力網(グリッド)からの供給量を減らし、グリッドへの負荷を軽減します。 - グリッド安定化
BESS にエネルギーを蓄えておくことで、ピーク需要時にも安定的に電力が供給できるようになります。 - 電力の分散化
複数の電源から電力を得ることで、地域が単一の発電所に依存せずに済みます。
もし地域の発電所が緊急停止しても、BESS からも電力が供給されれば、医療機器など重要な設備への電力を確保できます。 - 大規模クリーンエネルギープロジェクトの最適化
現在進行中の大規模な再生可能エネルギー計画では、発電したエネルギーを最大限活用するためにBESSが欠かせません。
今日のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の内部
一般的な BESS ユニットは、バッテリーモジュール、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、そしてバッテリーの直流電流(DC)を交流電流(AC)へ変換し、電力網(グリッド)との電力のやり取りを可能にする インバーターで構成されています。
これらのコンポーネントはすべて、通常はコンテナ型のハウジングにまとめて収められています。サイズ、バッテリー数、配置は用途に応じて異なります。
BESS の設計はさまざまですが、すべてのシステムが接着剤とシーラントに依存しています。
- 構造支持と接着
接着剤は、冷却プレートとバッテリーセルなど、BESS の内部部品を固定します。
用途に応じて、求められる構造強度に合わせた接着剤の配合が可能です。 - 熱マネジメント
高出力バッテリーが発生させる熱は、適切に逃がす必要があります。
接着剤やギャップフィラー(隙間充填材)は、バッテリーセルからヒートシンクへ熱を伝える役割を果たし、バッテリーができるだけ長く本来の性能を発揮できるよう支えます。封止材は、火災につながりうるサーマルランナウェイ(熱暴走)を防止するのに役立ちます。
もしセル単体で火災が発生した場合でも、封止材がそのセルを隔離し、火が他のセルへ広がるのを防ぎます。 - 保護性能
シーラントやガスケットは、水分・湿気・環境要因から内部コンポーネントを守り、故障や耐久性の低下を防ぎます。 - 電気絶縁
誘電コーティングは、バッテリー部品間でのアーク放電(スパーク)を防止し、ショートを避けます。
BESS において接着剤やシーラントがどのように使われるかは、最終的な用途によって異なります。
たとえば、農村エリアで硬く締まった砂利の上に設置される BESS であれば、振動対策として高い構造強度を持つ接着剤は必ずしも必要ありません。しかし、もしこの BESS に極めて高密度のバッテリーパックが多数搭載され、大量の熱を発生させるのであれば、火災を防ぐために封止材が不可欠になります。
BESS と BMS:新エネルギー時代の最強コンビ
すべての BESS には、バッテリー性能を監視するための高い知能を持つ BMS が必要です。BMS は電子システムであり、各バッテリーの充電状態(セルへ入る・セルから出るエネルギーの動き)を監視し、バッテリー容量を記録し、過充電や過度の使用からセルを保護します。
BMS はこれらの指標をバッテリーの寿命全体にわたって追跡し、健康状態を判断することで、どのバッテリーが交換時期にあるかをオペレーターが把握できるようにします。BMS は BESS のより長期的で安定した運用に貢献し、BMS が高性能であるほど、BESS もより効率的に動作します。
BMS の製造メーカーは、プリント基板(PCB)部品の固定、PCB の収納、高電圧コネクターや筐体のシール、そして PCB からヒートシンクへの放熱などに接着剤を使用しています。BMS がより高性能になるにつれ発熱量も増えるため、システムから熱を効率よく逃がすためには、液状封止材など、より高度なサーマルインターフェースマテリアル(TIM)が必要になります。
新しいエネルギー貯蔵リスクの管理
多くの BESS ではリチウムイオンバッテリーが使用されており、使用中に過熱する可能性があります。発生頻度は低いものの、バッテリー火災は消火が難しく、危険性も高い場合があります。
BMS は、過度に使用されたセルへの充電を制限することで火災リスクの低減に役立ちます。さらに、難燃性の封止材をバッテリー設計に組み込むことで、深刻な火災が発生するリスクを抑えることができます。
BESS は使用前に規制要件を満たす必要があります。一般的な規制には次のようなものがあります。
- UL 9540 – エネルギー貯蔵の安全規格:エネルギー貯蔵システムの危険性を評価するための基準を示し、安全問題をオペレーターへ知らせる通信システムの実装などを要求します。
- UL 9540A – 畜電池エネルギー貯蔵システムにおける熱暴走火災伝播評価試験方法:BESS が火災安全基準や建築基準に適合していることを確認します。
- NFPA 855 – 据置型エネルギー貯蔵システムの設置基準:エネルギー貯蔵システムに関するリスク低減のための最低要件を規定します。
BESS が販売される地域によっては、これらとは別の追加要件や異なる要件が求められる場合があります。BESS のコンポーネントは、こうした規制に適合していることを確認するための試験を受けます。
新しいエネルギー貯蔵システムのこれから
BESS は重量やサイズの制約を受けないため、新しい材料やバッテリーセル技術を試すための魅力的なフィールドとなっています。これらのイノベーションは無限であり、そして新しいエネルギーの成長を拡大するうえで不可欠です。
「BESS は本当に見事な存在です」と H.B. Fuller のグローバル・ビジネス・デベロップメント・マネージャーである Michael Cooper は語ります。「この種の設計や、さまざまなセルや電解質技術を持つバッテリーには、まったく異なるアプローチが必要です。これらの技術には固有の課題がありますが、同時に固有のニーズもあるのです。」
長年にわたり、業界ではリチウムイオンセルに代わる選択肢が模索されてきました。リチウムイオンバッテリーは可燃性があるだけでなく、リサイクルコストが高く、リチウム採掘には多くの資源を必要とします。代替として、ナトリウムイオンセルや全固体電池などが挙げられます。
リン酸鉄リチウム(LFP)セルも、リチウムイオンセルに代わる選択肢のひとつです。LFP セルもリチウムを含みますが、一般的なニッケル・コバルト・マンガン系のカソードではなく、鉄リン酸塩カソードを使用します。LFP の設計はエネルギー密度を低下させる一方で、安全性を向上させます。BESS の設計では、他の電力貯蔵システムほど高いエネルギー密度が重視されないため、LFP はコスト効率が高く、熱的に安定し、耐久性があり、充放電効率にも優れた有望な代替技術とされています。
新しいセル技術の採用に加えて、BESS は廃車となった電気自動車(EV)のセカンドライフバッテリーの受け皿にもなり得ます。これらのバッテリーは、自動車としての寿命を終えた後も長期間エネルギーを供給できます。EV の台数が増加するにつれて、引退するバッテリーの数も増えます。使用済み EV バッテリーを廃棄せず BESS に組み込むことで、その価値を最大限に活かすことができます。
今後は、モジュール式 BESS や AI 駆動の BMS がより一般的になる可能性があります。モジュール式システムはセルの修理や交換へのアクセスを容易にします。容量を増やしたい場合にも、既存ユニットを改修するよりモジュールを追加する方が、費用対効果が高くなります。また、セルの利用最適化のためにカスタム構築された AI アルゴリズムを備えた BMS は、バッテリー寿命のさらなる延長に役立ちます。
次世代 BESS を支える接着剤の役割
BESS と BMS が進化していくにつれ、革新的な接着剤製品が求められるようになります。たとえば、一部の代替セル技術は、リチウムイオンセルよりも膨張と収縮が大きい特性を持ちます。これらのセルを接着するためには、破断することなく伸びる(エロンゲーション)性能を備えた接着剤が必要です。
代替セル技術によって火災リスクが減少する場合でも、高温環境はバッテリーの早期劣化を引き起こす可能性があります。このため、BESS の設計に TIM(熱インターフェース材料)を組み込み、熱を適切に逃がすことは、引き続き重要な要素となります。
接着剤メーカーは、顧客と協力して新しい製品を開発したり、既存の配合を調整したりすることができます。
「これこそが、私たちがバッテリーメーカーに提供している“ソリューション志向のアプローチ”の一部なのです」と Cooper は説明します。「ストレスマネジメント、ねじれ圧縮、トルク、さらには三次元的なストレスに対応するために、私たちは多くの材料を調整できます。エンジニアと必要な要件について議論することで、次世代アプリケーションに使用される製品を生み出し、革新することが可能になるのです。」
H.B. Fuller の BESS/BMS 向け接着ソリューション
接着剤とシーラントは、新しいエネルギー貯蔵の成長とイノベーションを支える役割を担っています。
H.B. Fuller の BESS および BMS 向け接着剤・シーラント製品には、次のようなものがあります。
- EV Protect™ フォームは、BESS ユニットにおける熱暴走のリスクを低減します。
- EV Seal™ シーラント、キュアインプレイスガスケット、フォームインプレイスガスケットは、バッテリーパックを湿気や埃、その他の環境要因から保護します。また、メンテナンス時のアクセスも容易にします。
- EV Therm 熱伝導性接着剤およびギャップフィラーは、効率的に熱を放散してバッテリーの安全性と性能を向上させると同時に、アーク放電を防ぐ電気絶縁性を提供し、バッテリー全体の効率を高めます。
- EV Bond 接着剤は、構造支持を提供し、従来のファスナーの代替として使用でき、設計の可能性を広げます。
新しいエネルギー成長を、ともに前へ
より効率的な BESS ユニットを構築することは、新しいエネルギー生産者が国内外のエネルギー需要のより大きな部分を満たすことにつながります。
風力発電所を想像してみてください。巨大なタービンの下には、BESS ユニットが並んでいます。外観は控えめですが、新しいエネルギー生産を支えるかけがえのない存在です。
新しいエネルギーの未来はすでにここにあります──空にも、波にも、風にも、そして大地にも。
BESS に関する課題のために接着剤ソリューションを検討する準備が整ったら、ぜひ私たちにお声がけください。
ともに新しいエネルギーの成長を加速させていきましょう。
※積水フーラーのEVバッテリー向け接着剤の詳細は機能材・EVバッテリーのページでご確認ください。
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